
その中で生きている彼らは激しく熱い。同情心のない冷酷な世界で“皇帝”になるために人生をかける彼らは、熱く激しくならなければいけない。その中に、互いに異なる皇帝を夢見るチョン・サンハ(パク・ソンウン)とイ・ファン(イ・ミンギ)がいる。
「皇帝のために」はお金と野望、欲望が満ち溢れた釜山(プサン)最大のサラ金組織を背景に、それぞれ異なる皇帝を夢見る二人の男性の生々しい話をリアルに描いた作品だ。人間が持つ感情のうち“欲望”を極大化させたこの作品では、愛さえも欲望の一種に過ぎない。
写真=OPUS PICTURESチョン・サンハの温かさは、イ・ファンによって極大化される。知人から「サンハは悪い人ではなく、とても優しい」という話を聞いたパク・ソンウンは、「サンハとイ・ファンの関係を親子関係になぞらえて表現した。イ・ファンを導き、また、止める人物もサンハだ。親と子が争うこともあるが、結局子供に勝てる親はいない」というのがサンハのイ・ファンを見る視線だ。
既に皇帝のサンハと、組織のナンバー2だったジュング(映画「新しき世界」でのパク・ソンウンの役名)は、ぱっと見似ているようで微妙な違いがある。パク・ソンウンがサンハを念頭に置いたのも、このような微妙な違いからだった。「同じような役どころだという話をよく聞くが、微妙な違いを作り出すのが面白い。ジュングはソウルの人間で、サンハは釜山の人間だ。基本的なハードウェアが異なる人物だ。そこから自信を得た」
また、パク・ソンウンの知人の言葉のように、サンハは悪い人物ではない。この点もパク・ソンウンが「皇帝のために」を選んだ理由の一つだった。人々が「今度はどんな悪役なのか気になる」と言うと、パク・ソンウンは「悪役ではない」と言う。ただし、現在のイ・ファンが以前のサンハである可能性はあった。

また、釜山の方言で演技をする中、彼には目標があった。「釜山の人たちが見た時に釜山の人のように見えなければ」ということではなく、他の地方の人たちから“釜山の方言だな”と思ってもらえれば成功だという考えだ。「釜山にサイン会で行ったことがあるが、若い男性たちが85%だと言っていた」と満足感を示した。
完璧に操ることができれば当然その方が良いだろうが、釜山の方言よりもセリフをしっかり伝えることを優先した。完璧に方言を話すことができても、観客たちがセリフを理解できなければ意味がない。台本を見ながら演技をする役者と、劇場で映画を初めて見る観客の立場が異なることをパク・ソンウンは認識していた。
サンハとパク・ソンウンは妙に似ている部分がある。それはもちろん、パク・ソンウンがサンハを演じたからだが、その重厚な存在感と秘められた穏やかさと温もりは、パク・ソンウンという俳優個人から漂っている気がする。サンハとパク・ソンウンの似ている点について、「サンハはまさに僕だ」という回答が返ってきた。パク・ソンウン個人がサンハのような状況になったとしたら、同じような生活をしていただろうということだ。

パク・ソンウンはようやくブレイクを果たした。映画「新しき世界」は俳優パク・ソンウンにとってまさに“新しい世界”を開いた。40代で訪れたパク・ソンウンの状況は、満足のいく結果を生み出した。彼は「このような状況が20代や30代の時に来ていたら不幸だったと思う。40代で来てよかった。大人気というより、たくさんの方が好きになってくださることに感謝し、もっと頑張らなくてはという意味だと思う」と話した。
最近のパク・ソンウンの出演作を見ると、休むことなく疾走している。「新しき世界」以降、「チラシ:危険な噂」「逆鱗」に出演し、「ハイヒール」にも友情出演で登場した。このような忙しいスケジュールの中でも、暇があれば家族と一緒に過ごすように努めている。通勤しなければならない会社員ではないが、休みの日は家族、特に息子との時間を過ごしたいと言う。「子供には母親の存在が大きいが、父親という存在も必要だという話を妻がよくする。野球の試合をする時も連れて行くし、舞台挨拶をする時も連れて行く」
最後にパク・ソンウンは、「皇帝のために」に対する観客の反応について、「良くない映画は楽しんで見ないし、良い映画なら楽しんで見る。観客たちは本当にスマートになった。ただ観客たちに任せるのみだ」と語った。
記者 : イ・ウンジ、写真 : クァク・ギョンフン
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